川崎廣進・工房カワサキの世界

〜The World Of Koushin Kawasaki & Koubou Kawasaki〜

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インドの電力事情    2007年04月18日

この南インドのハイデラバードに来てやがて10ヶ月が経つ。日本にいる時と比べて一番の憂鬱は、無職で一年近くを過ごした事が今の私にとって大きな話題である。いくら日本で「定年」という言葉が公知されていても何か心に言いようの無い虚脱感がある。1年間を通して薄着で気楽に生きてゆける合理性と経済性、季節の変化はあるにせよ年中体感温度が同じに思える事も予測の範疇である。

私は日記にも記したように実にメンタルな問題ではあるが、日々無職を生きる辛さを何かで埋めよう、それは絵画という趣味を生かす事や、今まで私が日本でインドに強く憧憬を描き数々の問題をシュミレーションし、首尾よく体験するスリルに一喜一憂した事も、来てみれば途方も無いこの巨大な国のお家事情の中に計画倒れしていった。その見返りといったら笑われるが蟻やゴミ、隔日のように起きる停電である。

予測もしていなかったこの3つの問題は私しか取り上げないだろう。こんな事で気炎を吐く者は私位の者であろう。公の日記を使ってインドを語るにしては実に枝葉末節である事は百も承知の上である。ゴミや蟻についてはすでに何度か書いて多くのコメントも頂いた。ただ頻繁に起きる突然の停電は今後この国の発展に関わるインフラ整備の立ち遅れや、海外に門戸を広げようとする国にとって憂慮に堪えない問題である。

3ヶ月位前にインドの電力事情を聞いたことがあった。どうして無連絡で毎日のように停電するのか不思議でならなかった。氷屋、アイスクリーム屋さんや生ものを扱っている店はえらい損害をこうむるのではないか。年中熱い季節に、と 余計な心配したもんだ。そのとき聞いたんだが電気すら引けない多くの家々は電線から夜中に盗電するらしんだ。しかし見てみぬ振りして見逃してるようです。所得格差の厳しいお国事情もある。

その日その日を亀のようにスローペースで生きている私にとって停電は予定を狂わす悩みの一つでもある。前にも書いた様に、私の生活の一部分にもなっているパソコンに遊ばれている時間の多さは計り知れないのだ。日本ではパソコンに関する会話など、耳も貸さず、興味も示さず、おまけに避けて通ったアナログ人間だった。そんな私を変えたのは自慢にもならない無職という自分をもて余した空白時間だった。

朝起きて抜ける様な青空を仰いで、顎が外れるくらいに大きく息を吸をすってあくびをしたらスロー人間の一日が始まる。その時間は6時や8時や9時やばらばらである。おまけに寝るのもパソコンにもて遊ばれて朝方になることが多い。目尻を下げて自嘲したくなる様な生活習慣だ。読書もサイクルを変える要因である。私の生活も優雅を極めているな〜。65歳の年金生活者にこんな特権を貰えることは幸せの限りである。

日本に帰ったらどんな生活が待っているのか分からないがもう少しだ、インドライフにどっぷりと浸かっていよう。どうせインドも日本も同じ地球の上で同じ空の下で、どこ変わりない空気も吸って私は生きている。国境なんて陸地の一部を仕切ってるだけだ。何処を見回しても人間以外何も見えない。ならば本当に生物は輪廻転生し変わりなき生存の喜びを共有できるものならば、言葉の違いや肌の違いや貧富の差など所詮は砂上の楼閣に過ぎないのではないだろうか。

もしかしてこの地球上の差別は、すべて無知が起因しているのではないだろうか。 真夜中に一人ごそごそつぶやいて自分が今地球の何処にいるのかもつい知らずに苦々しい薄ら笑いを浮かべながら自分に納得したようにうなずいた。インドは素晴らしい世界遺産や深山幽谷は言うにおよばず歴史的素晴らしい建造物等、インド観光には不自由しない。蟻やゴミや停電などもっと視点を変えればいいのに。誰かが私に向かってささやいてるようだ。



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