川崎廣進・工房カワサキの世界

〜The World Of Koushin Kawasaki & Koubou Kawasaki〜

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RISHI VALLEY SCHOOL見学(その3)    2008年08月30日

私は一日3度の食事の度に周りの景色を確かめながら食堂に通っていた。路肩の草むらに咲いてる小さな草花でも、ここでは美しい環境を守るため一役を担っているんだ。腰をしゃがめて眺めていても、さりげなく転がっている路傍の石でも、どれをとっても人工的でなく自然のままだ。道は赤土。森や林はほとんどが自然林だ。人為的なところは校舎やコテージやテニスコート、運動場、バスケットボール場などごくわずかである。

ここは窓にはガラスが無いのである。その代わり太い鉄線で荒い網戸になっている。考えてみるとガラスなどいらないはずで一年中暖かく自然の風だけで十分健康的に暮らせるはずである。何事も安上がりに生活できることはありがたい。ラジオもテレビもパソコンも無く夜は不気味なくらい静かである。せいぜい本を読むのが時間つぶしに最適と思い2冊持ってきた。『原典 日本昔話』と山崎豊子の『沈まぬ太陽』だ。こんな静かな所で読んで居ると本当に山姥が出て来るんではないだろうか?  そこかしこに森の精でも、と気味が悪くなった。

早朝小鳥のさえずる声で目が覚めた。時刻は6時前でもう外は薄明るく出てみると深緑の中から小鳥が合唱している。「こんな環境で勉学にいそしめる子供は幸せだな」心底うらやましく思った。早朝のシャワーは冷たく身震いした。でも終わった後の体調はすこぶる体が火照って元気が出る。「今日はたくさん絵を描くぞ」と意気込んで支度をした。朝食までは多少時間があるしリュックをぶら下げて早朝散歩をした。今日も天気が良さそうで森を歩く足も軽やかだった。学生寮近くに来ると生徒のざわめきが聞こえ、外に大勢たわむれていた。ここではほとんど男女は別々に固まって会話を楽しんでいる。男女が一緒に話してる光景はほとんど無い。食堂でも皆男と女が別々に固まりあって食べている。

私は座りやすいところを選んでスケッチの準備をした。明日は出発日で何時までここにおれるか分からないので今日は本腰入れて描こう。「どうせ写真も撮れないし、かえって良かったかも知れない」自分に都合よく思って描いていた。相変わらず生徒や大人の人が集まってBERY GOODやBERY NICEと言っては見に来る。どうかしたら私の描いてる方向の前に子供を立たせてスケッチの中にこの子を入れて欲しいと厚かましく言ってくる。てっきりこの中の先生の家族と思って描いてあげると関係の無い近くに住んでいる人だった。言葉の障害はインドに来るといつでも私は発展途上国か後進国の旅行者になる。



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