川崎廣進・工房カワサキの世界

〜The World Of Koushin Kawasaki & Koubou Kawasaki〜

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もうすぐヒマラヤトレッキング    2008年09月21日

10月4日からいよいよ今年もヒマラヤトレッキングに出かける。昨年は5月初めだったが今年は5ヶ月遅いのでさぞかし寒さ対策をしておかなければならないだろう。前回は途中何度もあられや雨に泣かされた。寒さに子供達は歩を止めて立ちすくみ泣いていた子も何人もいた。3600メートルの山の尾根に吹き上げてくる風雨とあられで手や耳や露出した部分は痛かった。話によると10月は気候がいいと聞いているが、それでも寒さは前回より厳しいと創造できる。

今回のトレッキングはharidwar(2745メートル)が目漂でデリからここまで汽車で行く。ここはとっても美しく緑の牧草地で覆われた村らしい。ここからharsil bhojwassa(3792メートル)がベースキャンプになっている。いずれにしても昨年のloha gadera(2400メートル)がベースキャンプ地でbedanikund(3600メートル)を目指した事を思えばいくらか高く空気も薄いだろう。昨年は山を甘く見すぎて寒さが身に堪え、今度は備えだけは完備しなければいけない。

南インドでも、ここはデカン高原の標高600メートルの上で、冬も暖かく夏もいうほど暑くなく、海こそ無いが気候温暖なところに住んでいる関係上、私は同じインド国内の移動に深く考えなかったのが昨年の反省点である。しかし途中雨で体を濡らし、乾かす時間も無く、着替え不足で寒さに震えた経験は雪国の北陸に育ったいかな私でも、閉口したのもついこの間のようだ。何十年も登山などした事の無い私が、突然の参加で自然の厳しさに対する大きな教訓を得た。

「山を甘く見るな、山には神様が宿っている」尾根を歩いていて遥か遠くの雲の隙間から聞こえてくる小さな雷の音が、時間とともにだんだん大きく鳴り響き、空がまたたく間に灰色の雲に変わり稲光とともに爆雷のような地響きがしたと思ったら裾野から吹き上げる冷酷な冷え切った雨が次第にあられに変わり、頭上を越えて数百メートルも先に「ピシャ」と鈍い音を残して落ちた。そこには今しがた引き裂かれた大木が針葉樹独特の生々しい匂いを放って倒れていた。

途中道に迷ってあられに合い大木の下で雨乞いをしていた時、一人の青年に案内されて山岳民族の石と土で作った家にたどり着き70歳前後の老婆に私の冷え切った手を、深い皺でこわばしい温くもった両手で揉みほぐし、濡れた衣類を焚き火をおこして乾かして、絞りたてのミルクでチャイを飲ましてくれ、冷え切った五臓六腑が蘇った体験は、お金で代えられない、私のヒマラヤにおける珠玉の手土産として、いつまでも私の心の中で色褪せる事はないだろう。

前回の一年間のインド滞在に関して、逐一インド日記に書き記したが、私のお粗末な文章力と短い紙面の中ではとうてい書ききれなかったが、そのご恩に報いる為にも7回でヒマラヤ日記を書き添えた。見返りの無い突然の親切を少しでも多くの人に聞いてもらいたい一念で、無心にキーボードを叩く度、つい涙腺が緩んだ。文明とは程遠く離れたヒマラヤの奥地で厳しい自然と戦いながら生きている人達に「神のご加護がありますように」と思わず言葉にならない声で口ずさんだ。



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