川崎廣進・工房カワサキの世界

〜The World Of Koushin Kawasaki & Koubou Kawasaki〜

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第二回目ヒマラヤトレッキング(その10)    2008年11月26日

歩いていると右斜面にモニュメントの様に、高さ3メートル、横幅2メートル、厚さ70a位で、頭がMの字を書いた様な岩が5箇所位斜面に沿って固まって林立していた。顔を近づけると大小さまざまな小石が固まって形が出来ていた。指で砂の部分の軟らかそうな所をほじくるように触れたが、がっちりと全体が固まり、一個の石になっていた。気の遠くなる様な年月を経て、周りの軟らかいところが風化し硬い芯が残ってこの様な奇形が出来たのだろう。日本の国歌で「君が代」の歌詞「さざれ石が岩おとなりて」とあるのは、まさにこの石と思った。

最初の日に通過した時に気がつかなかったのが不思議だった。そしてここだけにどうしてこの様な形が残ったのだろう?それも疑問だった。そういえばこの中腹には落石しても不思議でないような浮石や危険箇所が方々にあった。大小さまざまな石の間隙に僅かな地被植物が、枯れ草の様に繁茂している光景が幾多あったが、簡単に落石しないのも下部まで固まって大きな巌になっているんだろう。転がってくる石はほんの僅かで、まだ固まってない部分だけだろうと素人解釈した。

私は日本の中にも、さざれ石の大小様々の玉石は何度も見たことが在り、特に珍しい物ではないが、奇岩と言うにふさわしいその形が、あたかも片側門柱の様な林立した姿は、山の景観としても素晴らしく、一日に数百人ヒマラヤを訪れ、この場所を往来するトレッカー達の歓迎塔の様で、表面のテクスチュアも形も荘厳で人為的な様相で佇んでいた。僅か数分ではあったが自分の体調を悪さを忘れて見とれていた。スケッチが出来なかった事が何とも残念に思った。

時間と共に休む回数が増え、腰を下ろしても次第に休息時間が長引いた。日中は暖かく歩いていると体が汗ばむほどであった。一休みを長めにとると次第に背中に悪寒を感じ又立ち上がって歩き始める。一昨年の下痢した時と、今年もトレッキング最後の日に同じ体調だった。何処でもいいから平らな所で仰向けになって1時間ほど寝たかったが、私だけが勝手に出来なかった。長かった一日も、皆に引きずられるように、何とかガンゴトリまで明るいうちに着いた。

着くなり泊まった部屋は、来た時と同じ部屋を指示された。B.ネルソンさんらは「ガンゴトリで有名なヒンズー寺院を見に行く」と私にも薦め、私も「折角だから」と思いついて行った。少し歩いていたら下痢で腹の調子が悪くなり、途中断念し走って部屋に戻りトイレに飛び込んだ。夕食までまだ時間もたっぷりあり、それまで体を横にして目をつむった。前回の経験をふまえて望んだ2回目のトレッキングで、予想外のアクシデントに、何が原因なのかいささかも情けなかった。

皆揃っての楽しい夕食時間も、私は少しだけ口にし翌日の長距離ドライブに備えた。ハリドワールまでの丸一日の車中は歩くより辛いが、明日は最後の日程で、何とか体調を良くしたかった。一度寝た後とあって、なかなか寝付かれなかった。暗闇のベットの上で、今年のトレッキングの思い出に耽っていた。「いつも元気な自分が用心してたにもかかわらず」…想い巡らすうちに眠っていた。



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