川崎廣進・工房カワサキの世界

〜The World Of Koushin Kawasaki & Koubou Kawasaki〜

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絵について考える    2007年04月13日

先日ハイスクールでの私の展覧会が終わった。インドに来て遅まきながらも目的を一つ一つ消化しつつある。絵の中身については満足出来るものではない。なぜなら私はインド人を描こうと意欲を燃やしてきたのだ、さにあらず理想の絵には程遠くとてももどかしい。しかし「一歩でも計画を前に進めなくてはならない」と自分に言い聞かす。

その展覧会の結果、状況を少し触れてみよう。そこはアメリカン系のハイスクールだけあって上流社会の子供達が多い。日本で言う高校位までが12年間一緒に学んでいるようだ。各クラスずつが30分間ずつ絵の見学時間を設けてあった。生徒、先生、一般人、父兄家族、友人の絵描きも来てくれた。通訳は多忙を極めた。

数え切れない質問を受けたが一番印象に残っているのが高校生位の男子生徒だった。自分の母親が油絵を描いているとの事だった。私はスケッチ展という見出しでしたので何時もの様な即興絵をほとんど並べた。色鉛筆、水彩、コンテ、パステル、鉛筆50枚くらいのうち3枚は15号くらいの自分を描いたデッサンにした。学校だしヌードと言うわけにもiかないね。

その彼曰く、僕の母は「絵は写真のようにきちんと描くのが上手い絵描きだよ」・・・私は他の質問を無視してその子を自分に近づけた。私はみんなの前で絵を描くパフォーマンスもしていた。皆、私も描いて欲しいと並んだ。1人2分にしても時間が足りない、その子供達のイメージ画を描いてみたがそれでも描ききれない、質問にも答えきれない。そこで私は考えた。描くのをやめて質問に答えるだけにした。とても体が忙しくて落ち着かない。

さっきの子供と話の続きをしたかった。彼は言う事もしっかりしていた。「君な絵はどんな描き方が上手い、下手てこと無いんではないか?」「アブストラクトでも写実でも描く人の自由でないかな」「一度君のお母さんに会いたいな」その子にこれだけの話をしたが手ごたえある返事は無かった。ただ私の言う事が理解しがたい表情をしていた。この子は家に帰ったらお母さんになんて言うだろうかな。それともお母さんも来て見てくれるだろうかな。

サインが欲い、写真を撮って、質問攻め、展示の絵に対する質問は真ん中のテーブルから立って通訳を連れてそこまで行かなければいけない、みんなの質問も容易に応じきれないジレンマでどうしたら皆公平に接しきれるだろうか考える暇も無い。まあ硬く考えずに30分もしたら新しい生徒と入れ替わるし大人は遠慮してほとんど子供の中を割り込んでまで来なかった。一人だけこの絵売っているんですか?と言われて断った。

忙しい日程が終わりそろそろ描いた絵をどのように整理して帰国の時の荷造りをしょうか考えた。このインドのハイデラバードだけしか絵を見て歩かないがここは油絵でも薄塗りで写実が主流だ、だけど新しいレストランや近代建築の中には徐々に色彩で構成されたヨーロッパ風版画などが店のデスプレイとしてたくさん飾り付けられていた。インドの文化芸術の世界でも少しずつ近代絵画の方向に変化している事を物語っているようだ。

私にしても同じ事である。そろそろ何でも描かずに自分スタイルをインドで固定しようと思ってここに来た。自分の方向を定めていながら人に「きれいな絵ですね」と言われると決意が緩んでついつい何でも描きたくなる。ああ心が決まらないし腕も決まらない。12月頃だったかアメリカンジャズがここに来た。ファッションショーもホテルであった。高かったけど所詮自分の向かう道と思いスケッチブックを持って勇んでいった。そんな高い金額でも会場が満杯だった。

ディナーは余分だが思い切り描いてきた。私は所詮食べ物には無頓着だ。ただ早描きの道を極めたい事とミュージシャンを描きたい事だ。楽器と激しい人間の動き、描いてる線が左右に踊り激しいリズムが私の腕を動かし体までが動いてくる。この街にもミニライブハウスのような所あればいいのにと思う。私は描き出したら口にパンを頬張りながらでも描きたい。でも機会はそんなに無いのが現実だ。

まだいくらか滞在期間は残ってはいるが私は5月1日から12日までヒマラヤに行く(頂上ではなく3〜4000メートル)。少しは体を鍛えておかなければ。ここに来て初めての北インド行きだ、デリーから行くコースらしい。この14日はその打ち合わせ会がある。1日平均8キロ歩行という事だ。風景を描くことはは好きではないがヒマラヤという恐れ多い大自然をこの目で見て何か手ごたえを感じたものを描いてきたい。帰ったらさっそく帰国の準備で忙しくなるぞ。IT無知なアナログ人間がこの1年パソコンの前にほとんど座って1年が経とうとしている。インドの空気を腹一杯に吸うておこう。



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